Summer trouble
昼飯は校舎横のベンチで食べる事にしている。
別にハーフだから暑い場所が好きとかではない。
ただ、外で食べると美味く感じる。それだけだ。
今日もいつもの指定席へと弁当箱を持って急ぐ。
さすがに夏に外で食べるのはきついな。なんて考えながら歩いていると何かにつまづいた
。
「なんだ?」
そこには横たえる幸村がいた‥‥。
「おいっ!大丈夫かよ!?」
軽く頬を叩いてみる。
「う〜‥‥ん?ここは?」
「校舎横だよ。なんでこんなとこでぶっ倒れてんだよ」
「失礼な。ぶっ倒れてなんかないぞ。罠を仕掛けていたんだ」
「‥‥いや、完全に気を失ってたから」
「何を言っている?軽くシャドウボクシングしてただけだってば」
「‥‥言ってる事バラバラだから、な。とにかく保健室行こう」
「ベッド‥‥!?いやだ!もうベッドには寝たくないんだ!」
「はいはい。じゃ部室で少し休めよ。熱中症じゃねーのか?」
ヤバい状態の幸村を部室へ連れていく事にした。
「ほら、濡れタオルだ。あんまり無理すんなよ。まだ完全復帰してないんだからよ」
タオルを渡し、弁当箱を開けると幸村が話し掛けてきた。
「君は親切だね。ぜひ名前を教えてくれないか」
なに言ってんだ?
幸村を無視して弁当を食い続ける。
「ああ、そうか。英語でないと通じないか。えっと、わっちゅぁねーむ?」
煤d‥ブッ‥!?
ウインナーを吹き出してしまった。
「幸村、いい加減にしてくれ。ウインナー落としただろ。もったいない」
「がっ外人が日本語喋ってる!?」
「外人じゃねーよ。ハーフだ。それにさっきからずっと喋ってたじゃねーか」
「そうだねマイク」
「マイクってなんだよ?」
「マイケル略してマイク。大丈夫、落としたウインナー拾って食べてた事は内緒にしておくよ、マイク」
「ジャッカルだ!拾ってねーよ」
「そういえばマイクはさっきから何を食べているんだ?」
「ジャッカルだよ‥‥。昼飯だよ。時間がないんだよ。幸村のせいで」
昼休みは残り少ない。
成長期の食べ盛り、弁当を残すなんてありえねー。
「それが‥‥食事‥‥?」
俺の弁当を覗いた幸村がオーバーアクションで失礼な事を言う。
「なんだよ。いいじゃねーか」
「それは‥‥なんていう食べ物?アフリカの故郷料理?」
「ほうれん草のおひたしだよ!おもいっきり日本食だよ!それに俺はブラジルハーフだ!
」
「ふーん、そんな事より」
博ゥ分で聞いといて!!
「なんで俺には食事がないんだい?」
「知るかよ。自分の教室にあるんじゃねーの?」
「そうか、俺もその宇宙食みたいなの食べさせられるかと思ってたから安心したよ。じゃあ取ってくる」
元気に部室を飛び出した幸村を見送る。
かあちゃん、なんか色々、ごめんな。
部活での幸村はいつも通りで、なんだか人間として大事なモノを失った気分になった俺。
Fin.